うさぎの書斎

司書教諭が読んだ本

ブックガイドのこと

ブックガイドは非常に参考にはなるものの、対象者の事とかを考えると一概にこれが良いとは言えない。

なにより基本的には古今東西の「名著」が多いので難しい。

このことについてはちょっと前にも書いた。

 

rabbitstudy.hatenablog.com

 切り口として最近面白かったのは、このシリーズ。

 

次の本へ

次の本へ

 

 

 

続・次の本へ

続・次の本へ

 

 まあただ難しい。とくにこのまま高校生に薦められるかというと難しい……。

私自身、自分の読書体験が児童書や近年の「ヤングアダルト」向け作品に満足に触れないまま、大人の本を読むようになってしまっていたため、中高生向けの本となるとからきし弱い。

そんな悩みを解決してくれるかのように出会ったのが、この本だった。

 

 高校の学校図書館関係者という立場からいうと、とにかく「素晴らしい」の一言に尽きるチョイスである。古今東西、分野問わず、中高生が読める、そして読んでほしい本がそろっているのである。「分野問わず」といところが素晴らしいし、子ども向けに平易な文章であるものが中心でありながら、奥深いという。

今日、取り置きをお願いした他の本をとりに丸善本店にいったら、ちょうど続編の

 

 に掲載中の本、全点平積み展示モードで特集棚作っていた(1の時も実施)。

ここに掲載されている本は、中高の学校図書館だったら全点購入してもいいものだと思っている。ちょっと予算が余ったときにやろうかなと。特に外国文学はどうしても私は後回しにしてしまうからね。

丸善の特集のお陰で?今回掲載されたものの中から買ったものはこちら。

 

10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー

10代からの情報キャッチボール入門――使えるメディア・リテラシー

 

 

 

それでも、読書をやめない理由

それでも、読書をやめない理由

 

 手持ちのお金が心許なかった(今月は本にかなりつぎ込んでるし……)のでこれだけにしたが、近々に入手したいのはこのあたり。

 

字が汚い!

字が汚い!

 

 

 

エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学―

エッチのまわりにあるもの―保健室の社会学―

 

 

 

少年の名はジルベール

少年の名はジルベール

 

 いやはや、けっこう本を見ているつもり(なんていってもよく出入りしているのが丸善本店ですよ!←田舎者なので、「丸善」だけでも十分だし、「本店」でも十分だし、ここなら規模も「すごい」と思ってる)なんですけど、知らない本が沢山ありすぎて、困ってしまいます。

 

……お金がいくらあっても足りない……。自分の財布も学校図書館の予算も。

あと本棚も足りないか。

 

研究ノートについて

高校生ぐらいから、研究者になることが夢だった。

調べたり、研究(まねごとだとしても)するのは大好きだったけど、頭はよろしくなかったので(記憶力がなきに等しい)職業としては成り立たなくても、下手の横好きで細々とやってきた。

お陰で、CiNiiで検索すると、文学と学校図書館関係で名前が出るし、さらに範囲を広げると日本留学生事情にまで浸食し、台湾の日本統治時代の教育関係までなんだか知らないけど関わっている、という摩訶不思議な状態になっている。

これもまた、図書館に繋がる内容でもあるので、研究ノートとしてまとめていきたい。

レファレンス雑記について

勤務校の情報の授業では、プレゼンテーションに力を入れていて、そのための調査で生徒達は図書館にやってくるのだが、なかなかどうして難しいレファレンスが持ち込まれる。

なぜなら、調査の糸口として「まず文献にあたる」のならともかくとして、なぜか知らないが教科の指導方針は、「インターネットやインタビュー、その他いろいろ調べたけれどわからなかったら図書館へ」という感じなので、結構本質的な問に対する答えを要求される。

その上、生徒の知りたい内容が充分に言語化されていないもんで、

生徒:情報の調べ物で来ました。

私:何について調べているのかな?

生徒:情報の調べ物で……

私:(だから情報の調べ物で来てる前提なのはわかってる)何をテーマに選んだの?

生徒:洗濯機について

私:・・・洗濯機の何について調べているのかな?

 

ということの繰り返しだったりする。

それでも思わぬ資料を入れることにつながったり、こちらもさまざまなことが勉強できる良い機会となっているので、そのレファレンス例を書いていきたい。

心の中の100冊:006.『家族』南木佳士――今がおわる

高校生の読書傾向を見ていると、やはり家族がテーマの物語はよく読まれる。特に書評や感想文の題材としては、自分自身の家族と比較できるという点で、等身大の主題でもあるのだろう。

その中で、私は大好きなので選んでくれるとうれしいことはうれしいのだが、高校生にとって馴染みの深い世界かというと、決してそうではない老人の物語であるから、なぜ選ばれるのか不思議な1冊。

 

家族 (文春文庫)

家族 (文春文庫)

 

 

南木佳士に対する思いは、以前に書いた。

 

rabbitstudy.hatenablog.com

 家族の物語は、沢山ある。本校でも人気の作品や、読み応えのあるものを挙げていきたい。

中高生にとって読みやすさの旗手としては、やっぱり重松清だろう。

 

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

 

 

 

とんび (角川文庫)

とんび (角川文庫)

 

 

 

ポニーテール (新潮文庫)

ポニーテール (新潮文庫)

 

 重松清を挙げようと思えばいくらでも挙げられる。

『イノセント・デイズ』がドラマ化される早見和真も、活字からその場面を想起させやすさもあるという点ではわかりやすく、なおかつ最後には心にずしりとくる何かしらの「感動」を与えてくれる作家である。ただ、重松清ほどはみずから手にはとらない。薦めてみても見向きもしない。高校生にも読みやすいと思うんだが、子どもの思考は不思議である。

 

ぼくたちの家族 (幻冬舎文庫)

ぼくたちの家族 (幻冬舎文庫)

 

 

ぼくたちの家族

ぼくたちの家族

 

 

 映像化された作品なのに、全く動かなかった。南木佳士に比べたら明るくて読みやすいと思うんだけどな。

「家族」という「日常」の中で、ちょっとした変化を劇的につついて描くのがうまいのは奥田英朗

 

家日和 (集英社文庫)

家日和 (集英社文庫)

 

 

 

我が家の問題 (集英社文庫)

我が家の問題 (集英社文庫)

 

 

 

我が家のヒミツ

我が家のヒミツ

 

 よくもまぁ、こんなに「ささやかな」「家族」の出来事を見つけてくるよな、と関心してしまう。

 

「家族」の数だけ、いろいろな「家族」の形が存在する。

 

rabbitstudy.hatenablog.com

 

 

卵の緒 (新潮文庫)

卵の緒 (新潮文庫)

 

 ちなみに瀬尾まいこは、紹介すると飛びつくように借りていく。

 

まだまだネタは尽きないが、このあたりにしておく。

心の中の100冊:005.『モンテ・クリスト伯』アレキサンドル・デュマーー赦免の途なし

 意図したわけではないが、なぜか刑務所物語は続く(というより脱獄物語か)。

執念の脱獄物語といえば、アレキサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』だろう。

  

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

 

 執念深さや目的を達成する強さとかと、主人公を表現するが、私が評価する点は「ブレない強さ」である。多少言いかえただけじゃないか、の世界ではあるが、目的を達成するというのはそこでおわってしまう。 

もちろん脱獄よりは、信念と復讐が主題の物語である。

 

アレクサンドル・デュマは、非常にドラマチックな作風と一言で表せるぐらいのもので(単に私の語彙が貧弱のせいか。それ以外の表現が思い浮かばない)、激動のフランス革命の時代を描かせると、彼を超える作家はなかなかいないだろう。

もちろん、他にも17~19世紀のフランスを描いた物語はたくさんあるだろうが、多分デュマほどのスケール感がある物語を描いた作家はいないじゃないかと感じている。

 

三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 上 (角川文庫)

 

 

三銃士の物語は、小学生の時に見たNHKアニメ三銃士」が先だったから、アラミスが男性であることに違和感覚える私……。

たぶん、メインキャラの男装が共通項になるのだろう、どうしても三銃士と聞くと必然的にこちらの漫画を思い出す。

 

 2015年に続刊が刊行された時にはビックリしましたが。

 

ベルばらへの回想とともに、この記事を書こうとして改めてデュマについてしらべていたところ、こんな作品もあったことを思い出す。

 

王妃の首飾り 上 (創元推理文庫)

王妃の首飾り 上 (創元推理文庫)

 

 この題材となった事件は、他の作品でも描かれている。 

怪盗紳士ルパン

怪盗紳士ルパン

 

  

王妃マリー・アントワネット(上)

王妃マリー・アントワネット(上)

 

 

デュマの作品への想いが強すぎて、かえって文章化が難しく(^0^;)、ちょっと紹介本の羅列となってしまっているが、子供向けにもリライトされている。 

モンテ・クリスト伯 (上) (岩波少年文庫 (503))

モンテ・クリスト伯 (上) (岩波少年文庫 (503))

 

  

 

巌窟王 (講談社青い鳥文庫)

巌窟王 (講談社青い鳥文庫)

 

 私が子どもの時読んだのは、『巌窟王』だった。そこへ中学一年生の時の担任が、学級通信で「恩讐の彼方に」を連載?(全文手書きで、連載形式で掲載した……)したもんだから、高校生になって岩波文庫の『モンテ・クリスト伯』を読むまでは、『巌窟王』と『恩讐の彼方に』を混同してしまっていた。

 

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)

 

 アレクサンドル・デュマの話に戻そう。

昔は作家のことについてはそれほど意識せず読んでいたし、インターネットなんて無い時代だったから、そう気軽には調べようとも思わなかった。だから、デュマが実は黒人奴隷の血をひいているとは、おとなになるまで知らなかった。第一、彼が活躍した時代は、そもそも文字が読み書きできるなんて相当なインテリ層なわけで、そういう思い込みもあった。

もともとデュマの父親が、フランス人貴族の父と黒人奴隷の母の間に生まれ、父親の元で教育を受けたということそのものが珍しい。

また、アレクサンドル・デュマの息子も劇作家として活躍した。親子三代、出自も関係して非常に劇的な人生を送った。その土台が、あの作品のスケール感に繋がるのではないかと感じるほどに。

その親子三代については、佐藤賢一の作品が好きである。

 

黒い悪魔 (文春文庫)

黒い悪魔 (文春文庫)

 

 貴族と黒人奴隷の間に生まれ、フランス軍人として名を馳せた父・トマ=アレクサンドル・デュマ将軍の小説。

アレクサンドル・デュマについては、佐藤は『褐色の文豪』と表現している。

 

褐色の文豪 (文春文庫)

褐色の文豪 (文春文庫)

 

 そしてデュマの息子(彼も婚外子として生まれたため、一筋縄ではいかない一生を送った)については、こちら。

 

象牙色の賢者

象牙色の賢者

 

 まだ文庫されていないため未読であるが。

ちなみに息子デュマの作品はこれである。ちょっと毛色が違うため、初めて知った時はビックリした。 

椿姫 (新潮文庫)

椿姫 (新潮文庫)

 

 

デュマを知るということは、西洋諸国と黒人奴隷の関係や歴史を知ることにも繋がっているのである。

心の中の100冊:004.『宣告』加賀乙彦――生きた人間の手

刑務所のリタ・ヘイワース」に続いて、日本の獄中物語の一つ『宣告』。
著者の加賀乙彦が、精神科医として死刑囚達との交流の中で生まれた問題意識を小説化した作品である。

 

宣告 (上巻) (新潮文庫)

宣告 (上巻) (新潮文庫)

 

 
「死刑」という人の生と死を直視しなければならない作品で、なかなか読みすすめるにはメンタル面の強さが要求されるが、この先の社会の荒波にもまれることを考えると辛抱して読んでほしいところではある。

作中の主人公は、1953年に起きたバー・メッカ殺人事件の正田昭をモデルとしている。

バー・メッカ殺人事件は、「アプレゲール犯罪」の一つともいわれている。正田昭が生きた時代は、第二次世界大戦を境に、戦前の価値観、道徳観が大きく覆され、その時代を最も多感な思春期を迎えた若者の中には、道徳観が崩壊し、無軌道ぶりを発揮する者も少なくなかった。そのような若者達によって引き起こされたのが「アプレゲール犯罪」である。


正田は、父は弁護士(幼少時に死別)、母も当時にしては相当な高学歴だった大学出身で教師となり、相当なインテリそうに生まれた。自身も戦後の混乱期であったにもかかわらず相応な教育を受け、まだ衣食住にも満たされていない人々が多くいた中で、満たされた人生だったはずなのである。しかし兄弟が引き起こした家庭内暴力や、本人もまた自堕落的な生活を好み、その挙げ句の犯罪となった。
事件については、いくつかの書籍でも取り上げられている。

 

図説 現代殺人事件史 (ふくろうの本/日本の歴史)

図説 現代殺人事件史 (ふくろうの本/日本の歴史)

 

 

 いうなれば、死刑になるほどの重大事件だった以上に、その時代を色濃く反映した犯罪であり、日本の輝かしい戦後復興と表裏一体にある「闇」を象徴する事件でもあった。


正田自身も、獄中で手記的な小説を書いている(私は未読)。 

 

夜の記録 (聖母文庫)

夜の記録 (聖母文庫)

 

 

 

獄中日記・母への最後の手紙 (1971年)

獄中日記・母への最後の手紙 (1971年)

 

 

推薦入試対策として「読むべき本」を聞かれると(入試対策のために本を読むというのもどうかとは思うが)、結構な頻度でこの作品を推薦している。
死刑制度の問題は、社会が引き起こす現象(犯罪の背景にあるもの)、犯罪や信仰にいたる心理、また幼少期の親子関係や教育環境の問題など、法学部や社会学部、心理学部、教育学部と幅広い分野に繋げることが出来るからだ。さらにキリスト教系の学校であれば「ウケ」は一層良くなる(やっぱり本末転倒だとは思ってるが)。


以前、某キリスト教系女子大の推薦入試を受験する生徒に、本書を読ませたことがある。一読しただけでは、私が薦めた意図まで読み切れず、泣きつかれたため、幼児教育を学ぼうとしている人間の視点でみて、主人公の幼児時代の生育環境についてどう思うか、それから死刑囚として自分の罪を直視し、人々との様々な形での交流を通して信仰にいたる心理について、キリスト教主義学校で学びこれからも学んでいく一人としてどう感じたのか、その視点で読むようにアドバイスしたところ、面接官がこの本に触れたことにいたく感激するたまりいろいろと詳細に聞かれて、かえって閉口したらしい。まあ根が真面目で、一夜漬けでも作品を丁寧に読みすすめたおかげで面接も乗り切ったから、結果オーライか。

 

前述した通り、本書にはさまざまに命をめぐって重い問題提起をしている。筆者自身がどこまで意識したかどうかは分からないが、主人公も、そのモデルとなった正田も、ある意味戦争が捲き起こした「時代」の犠牲者である。単に戦闘で勝つか負けるかの話ではない。様々な形で、その国の人々の人生を左右させてしまう恐ろしさも、私はここから読み取りたい。