うさぎの書斎

司書教諭が読んだ本

戦争と平和を考える――「戦争はなかった」小松左京

人というのは「忘れる」生物である、とつくづく思う。しかも、けっこう「意図的」に。苦しみ、悲しみで、心身共に追い詰められるのをまるで防御するかのように「忘れる」。先日、宮城県石巻市立大川小学校跡を訪れた。そこで改めて「記憶」の大切さと「風化…

ブックガイドのこと

ブックガイドは非常に参考にはなるものの、対象者の事とかを考えると一概にこれが良いとは言えない。 なにより基本的には古今東西の「名著」が多いので難しい。 このことについてはちょっと前にも書いた。 rabbitstudy.hatenablog.com 切り口として最近面白…

研究ノートについて

高校生ぐらいから、研究者になることが夢だった。 調べたり、研究(まねごとだとしても)するのは大好きだったけど、頭はよろしくなかったので(記憶力がなきに等しい)職業としては成り立たなくても、下手の横好きで細々とやってきた。 お陰で、CiNiiで検索する…

読書記録について

日々、いろんな本を手に取っているので、備忘録的にかけたらと思う。学校図書館とか関係無しに、とにかく私が読んだ(もしくは手に取った)本を記録。 最低限書誌情報だけになる可能性があるが、それだけでも続いたら褒めて。

レファレンス雑記について

勤務校の情報の授業では、プレゼンテーションに力を入れていて、そのための調査で生徒達は図書館にやってくるのだが、なかなかどうして難しいレファレンスが持ち込まれる。 なぜなら、調査の糸口として「まず文献にあたる」のならともかくとして、なぜか知ら…

心の中の100冊:006.『家族』南木佳士――今がおわる

高校生の読書傾向を見ていると、やはり家族がテーマの物語はよく読まれる。特に書評や感想文の題材としては、自分自身の家族と比較できるという点で、等身大の主題でもあるのだろう。 その中で、私は大好きなので選んでくれるとうれしいことはうれしいのだが…

心の中の100冊:005.『モンテ・クリスト伯』アレキサンドル・デュマーー赦免の途なし

意図したわけではないが、なぜか刑務所物語は続く(というより脱獄物語か)。 執念の脱獄物語といえば、アレキサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』だろう。 モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫) 作者: アレクサンドルデュマ,Alexandre Dumas,山内義雄 …

心の中の100冊:004.『宣告』加賀乙彦――生きた人間の手

「刑務所のリタ・ヘイワース」に続いて、日本の獄中物語の一つ『宣告』。著者の加賀乙彦が、精神科医として死刑囚達との交流の中で生まれた問題意識を小説化した作品である。 宣告 (上巻) (新潮文庫) 作者: 加賀乙彦 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2003/0…

心の中の100冊:003.「刑務所のリタ・ヘイワース」/スティーブン・キング――キリストは我が救い主

小説が映画化なりドラマ化されると書店に平積みされてより目につきやすく、また普段本を読まない層にもうけいられらるため、売上げや図書館での貸出の増加に大いに貢献する。私の場合、もともと映像を見ることが好きではないというか、そもそも動画を認識す…

心の中の100冊:002.『本が多すぎる』斎藤美奈子ーー本が多すぎる〜♪

読む本に困ったら、人のオススメに頼るのも本探しの一つである。世の中には結構ブックリスト的なものにあふれてる。学校でも配られたりしているだろう。勤務校でも作っている。 ただブックリスト、難点は誰が作っても誰が読んでも、だいたい紹介されている本…

心の中の100冊:001.『寵児』津島佑子――「父」の不在

第1冊目を何にしようかと迷いに迷ったあげく、もっと別の機会にとか思いつつも、今の私の血と肉となったこの人を挙げる。津島佑子である。今の子どもたちには、「太宰治の娘」から紹介しないとならないと思う。 寵児 (講談社文芸文庫) 作者: 津島佑子 出版…

Introduction:心の中の100冊

さて、かなり長期間放置してしまいました。忘れていたわけではないんです、単なるずぼらです。書くのは好きなんだけど、面倒くさがり屋の方が強く主張してしまうし、なによりも結構時間かけてしまうので、次の本を読みたい……という感じです。 それでも何かし…

2017年には向けて

恐ろしいもので、現職に就いて15年目を迎えようとしてます。 この間、いろんな形で本を紹介していこうと頑張ったつもりですが、とにかく読みたい本が先立ち、紹介はつい後回し…。 少なくとも、来年は今年より冊数多く紹介できればいいな、と、今年はわずか二…

英語は共通言語になり得ない

私が作文教育関係で教材研究をする時、必ず手に取るのが外国語専門の言語学関係者の書籍である。少し前なら鈴木孝夫や外山 滋比古あたりの著作を愛用していた。 日本人学者による日本語学のための書籍は、基本的に日本語学を学んでいる人間のためのものであ…

「隠れ読み」人生

我が一家は読書家、というより活字中毒一家であった。幼い時から、家の中には本が溢れていた。かつては「教育県」といわれ、さらには教員ないし教育関係に仕事に従事した人が多かったせいもあってか、本を買うことが何よりの楽しみであり、貧しい我が家では…

東京オリンピックは、高度経済成長期のにぎやかなお祝い

戦後70年ということで、この70年間を振り返る書籍が何冊も刊行された。 私も勢いに任せて買ったが、なかなか本腰入れて時間かけて読む機会がなく積ん読状態。 ようやく読んだのが、『戦後史入門』。 戦後史入門 (河出文庫) 作者: 成田龍一 出版社/メーカー: …

事実こそ小説

もともと評伝が好きである。 一人の人間の生き様を読むのが楽しい。その人のハレの部分もカゲの部分も、どちらもあって初めてその人生が色彩豊かになる。 そして、ここのところ吉村昭がマイブームになっていた。 だから、実家に帰省中、長野の大型書店でこれ…

下りるために登るんさ

1985年8月12日。私は小学生で、テレビで日航機墜落の速報を目にした。その後、祖母を相手に「大変だー!」と騒ぎ、テレビを通して入ってくる速報に釘付けになっていた記憶がある。私の長野出身。当初、言われた墜落現場は長野県。複数の目撃が県内から寄せら…

オリジナリティー

作家は文字という道具を用い、自分の世界を表現する。語彙そのものは何万語という途方もない数であるが、それでも無限ではない。言い換えれば、限られた範囲の中で言葉を組み合わせて表現しなくてはならない。作曲家はもっと大変である。基本は12音。あとは…

ミクロの決死圏

「死」は恐ろしいことである。人は、突然「死」に直面するとしばしばパニックになる。特に、それが原因不明で治療法も対処方法もわからずとなれば、集団ヒステリーともパニックともなり得る。 最近でいえば、エボラ出血熱がそうであり、少し前は各種新型イン…

ピカ

8月6日なので、ヒロシマに哀悼の意を込めて。 小学校1年生の時の、母からのクリスマスプレゼントがこの本だった。 ひろしまのピカ (記録のえほん 1) 作者: 丸木俊 出版社/メーカー: 小峰書店 発売日: 1980/06 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 15回 こ…

奇跡のリンゴ

読書に関する本は、可能な限り入手している。 私の読書術というのは、誰をまねしたものでもなく、自己流である。そのためなかなか言語化して説明するのは難しい。自分の読書術の言語化にふさわしい表現を探して読み続けていると言っても過言ではない。 また…

悪党

好きな作家をあげる時、この数年間は南木佳士と答えてる。 もともと母が読んでいたこともあり、高校時代、母のところから文庫を持っていっては読んでいた。母の読書の傾向は、その時々ではっきりしていたので、南木佳士を読んでいたときには正直びっくりした…

肩たたき

「家族」とはなんだろうとたびたび考える。 両親がそろっていても問題がある家庭はあるし、そろっていなくても立派な家庭もある。 両親の職業が、医者や弁護士といった世間一般的に「立派な」職業についていても、不幸せな家族がある。 一方で、世間には「恥…

無限の星空

高校時代、吹奏楽部、文学部、演劇部と部活を渡り歩いた。一番長く最後まで所属したのは文学部。演劇部は準部員の立場。友人から頼まれた。高校二年のときの演劇部。部員三名。頼まれて入った準部員二人。さあ、なにやるか、金もないから大道具に金もかけら…

シンパシイ

当事者ではないけれど、大きな事件が衝撃の記憶で残っていて、その話になると多少なりとも興奮するという事件は、誰にでもあるらしい。 うちの母の場合は、ケネディ大統領暗殺、三島由紀夫割腹自殺、浅間山荘事件。 私は、日航ジャンボ機墜落事故とサリン事…

とりあえずご挨拶

高校生相手に図書館利用教育と読書教育に携わっています。 学校図書館、特に高校の図書館、そしてあまり情報がない高校生の読書傾向についてまとめていきたいと考えてます。 それから、私の読書が電子書籍に移行してから、ますます作品の内容と表紙とタイト…