うさぎの書斎

司書教諭が読んだ本

心の中の100冊:005.『モンテ・クリスト伯』アレキサンドル・デュマーー赦免の途なし

 意図したわけではないが、なぜか刑務所物語は続く(というより脱獄物語か)。

執念の脱獄物語といえば、アレキサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』だろう。

  

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

 

 執念深さや目的を達成する強さとかと、主人公を表現するが、私が評価する点は「ブレない強さ」である。多少言いかえただけじゃないか、の世界ではあるが、目的を達成するというのはそこでおわってしまう。 

もちろん脱獄よりは、信念と復讐が主題の物語である。

 

アレクサンドル・デュマは、非常にドラマチックな作風と一言で表せるぐらいのもので(単に私の語彙が貧弱のせいか。それ以外の表現が思い浮かばない)、激動のフランス革命の時代を描かせると、彼を超える作家はなかなかいないだろう。

もちろん、他にも17~19世紀のフランスを描いた物語はたくさんあるだろうが、多分デュマほどのスケール感がある物語を描いた作家はいないじゃないかと感じている。

 

三銃士 上 (角川文庫)

三銃士 上 (角川文庫)

 

 

三銃士の物語は、小学生の時に見たNHKアニメ三銃士」が先だったから、アラミスが男性であることに違和感覚える私……。

たぶん、メインキャラの男装が共通項になるのだろう、どうしても三銃士と聞くと必然的にこちらの漫画を思い出す。

 

 2015年に続刊が刊行された時にはビックリしましたが。

 

ベルばらへの回想とともに、この記事を書こうとして改めてデュマについてしらべていたところ、こんな作品もあったことを思い出す。

 

王妃の首飾り 上 (創元推理文庫)

王妃の首飾り 上 (創元推理文庫)

 

 この題材となった事件は、他の作品でも描かれている。 

怪盗紳士ルパン

怪盗紳士ルパン

 

  

王妃マリー・アントワネット(上)

王妃マリー・アントワネット(上)

 

 

デュマの作品への想いが強すぎて、かえって文章化が難しく(^0^;)、ちょっと紹介本の羅列となってしまっているが、子供向けにもリライトされている。 

モンテ・クリスト伯 (上) (岩波少年文庫 (503))

モンテ・クリスト伯 (上) (岩波少年文庫 (503))

 

  

 

巌窟王 (講談社青い鳥文庫)

巌窟王 (講談社青い鳥文庫)

 

 私が子どもの時読んだのは、『巌窟王』だった。そこへ中学一年生の時の担任が、学級通信で「恩讐の彼方に」を連載?(全文手書きで、連載形式で掲載した……)したもんだから、高校生になって岩波文庫の『モンテ・クリスト伯』を読むまでは、『巌窟王』と『恩讐の彼方に』を混同してしまっていた。

 

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (岩波文庫)

 

 アレクサンドル・デュマの話に戻そう。

昔は作家のことについてはそれほど意識せず読んでいたし、インターネットなんて無い時代だったから、そう気軽には調べようとも思わなかった。だから、デュマが実は黒人奴隷の血をひいているとは、おとなになるまで知らなかった。第一、彼が活躍した時代は、そもそも文字が読み書きできるなんて相当なインテリ層なわけで、そういう思い込みもあった。

もともとデュマの父親が、フランス人貴族の父と黒人奴隷の母の間に生まれ、父親の元で教育を受けたということそのものが珍しい。

また、アレクサンドル・デュマの息子も劇作家として活躍した。親子三代、出自も関係して非常に劇的な人生を送った。その土台が、あの作品のスケール感に繋がるのではないかと感じるほどに。

その親子三代については、佐藤賢一の作品が好きである。

 

黒い悪魔 (文春文庫)

黒い悪魔 (文春文庫)

 

 貴族と黒人奴隷の間に生まれ、フランス軍人として名を馳せた父・トマ=アレクサンドル・デュマ将軍の小説。

アレクサンドル・デュマについては、佐藤は『褐色の文豪』と表現している。

 

褐色の文豪 (文春文庫)

褐色の文豪 (文春文庫)

 

 そしてデュマの息子(彼も婚外子として生まれたため、一筋縄ではいかない一生を送った)については、こちら。

 

象牙色の賢者

象牙色の賢者

 

 まだ文庫されていないため未読であるが。

ちなみに息子デュマの作品はこれである。ちょっと毛色が違うため、初めて知った時はビックリした。 

椿姫 (新潮文庫)

椿姫 (新潮文庫)

 

 

デュマを知るということは、西洋諸国と黒人奴隷の関係や歴史を知ることにも繋がっているのである。