心の中の100冊:003.「刑務所のリタ・ヘイワース」/スティーブン・キング――キリストは我が救い主
小説が映画化なりドラマ化されると書店に平積みされてより目につきやすく、また普段本を読まない層にもうけいられらるため、売上げや図書館での貸出の増加に大いに貢献する。
私の場合、もともと映像を見ることが好きではないというか、そもそも動画を認識することはどうやら不得手とする特性を持っているようで、映画などがきっかけでその書籍と出会うということはほとんどないが、今回取り上げる本書は例外中の例外と言っても良い。
- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1988/03/30
- メディア: 文庫
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- 作者: スティーヴン・キング,Stephen King,山田順子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/03/25
- メディア: 文庫
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本書の解説を読む限り、本書の「恐怖の四季」のシリーズは、マーケットでは売りにくい中篇の作品で、そのためキング自身にとって好き勝手に書くことが出来た作品らしい。だからどの作品もキング自身の傑作となり、「秋」にあたる「スタンド・バイ・ミー」が名作となったのは、キングの実力が遺憾なく発揮されたおかげでもあろう。おかげで、シリーズ名は影が薄くなり、作品が単発で注目されるようになってしまったが。
このシリーズ、「スタンド・バイ・ミー」がずば抜けて知名度があるのに対し、若干知名度が低いが次に目につくのは標題にもなっているため「ゴールデン・ボーイ」。
しかし私は、「刑務所のリタ・ヘイワース」が一番の傑作だと思っている。
主人公は妻とその恋人の殺害という「えん罪」で刑務所に服役することになった若い銀行マンが、過酷な刑務所の中で知能を駆使して生き抜き(まさしく人権など度外視で死ぬか生きるかの世界)、最後は脱獄する物語を、受刑者仲間の目を通して描いた物語である。名作『ショーシャンクの空に』の原作で、先述した通り、私には珍しく先に映像で見て感動し、原作を求めたのであった。
主題も多岐にわたる。えん罪、刑務所における人権問題、印象に左右されかねない陪審員制度、そして教育と貧困の問題、なにより図書館(知識・教養)が与える影響の大きさ。
いかに自分の信念に従って生きることが出来るかは、知識力を総動員することが大切なのか、そのためには本(図書館――囚人達にとって唯一知識教養教育を授けてくれるのが囚人図書館)がどれだけ必要とされているものなのか。
究極に極悪な環境での描写であるからこそ、教育の大切さ、本を読んで知識教養を深める大切さと贅沢さ、それが如実にわかる作品でもある。
キング自身、大学図書館で働いた経験もあるので、司書や図書館関係者からみても面白い作品がある。
図書館警察 (Four past midnight (2))
- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,白石朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1996/09
- メディア: 単行本
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今だと、『図書館戦争』との比較研究も面白いかも知れない。
映画を観てからでもいいし、作品をよんでから映画を観てもいい。何回もよんで主人公の生き様について考えて欲しい1冊。