肩たたき
「家族」とはなんだろうとたびたび考える。
両親がそろっていても問題がある家庭はあるし、そろっていなくても立派な家庭もある。
両親の職業が、医者や弁護士といった世間一般的に「立派な」職業についていても、不幸せな家族がある。
一方で、世間には「恥ずかしい」職業についていても、幸せな家庭があってもおかしくない。
本書は、4つの家族の物語。
表題でもある『at Home』は、父親は泥棒、母親は結婚詐欺師。いわゆる「犯罪者」である。
当然、その子どもは、「偽造パスポート」作成に携わったり(主人公)、弟はゲームの世界で生きていたり、……と、この家庭を世間からみたら、「蛙の子は蛙」と言われるのがオチである。
この両親、けっこう情けない。
主人公である息子に頼り切っている。だから泥棒でもしないと生きていけないんだろうな、と想像はつく。
両親はまるで息子に守られている。この段階で、一風変わった家族愛が垣間見られる。
そしてある日、情けない両親が我が子のためちょっとばかり仕事(といっても犯罪だが)をがんばったら、ドジって逆に事件に巻き込まれてしまう。
その危機的状況を脱するために、情けない父親はがんばる。けっして褒められるような方法ではないけれども、妻と息子を守るためにがんばる。
そこにもまた家族愛が存在する。
以下、ネタバレ含む。
実はこの親子、本当に血の繋がった親子ではない。
血が繋がっていなくても、絆は深くなれるのだ。
日本の小説ではあまり見かけないが、外国の小説を読んでいると、子どもがいないことの解決策として、不妊治療以上に養子縁組を選択肢としてあげる場面によく遭遇する。
それだけ遭遇するということは、つまりそれだけ「当たり前」のこと。
しかし、日本ではまだまだ少ないから、このような家族関係にちょっとだけ戸惑う。
まあ、日本でも昔は家系断絶にならないよう、家としての養子縁組は多かったのだが。
物語が進むにつれて、ある絵本を思い出した。
- 作者: トミー=アンゲラー,いまえよしとも
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1969/12/16
- メディア: 単行本
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著者の本多孝好も、これを読んでいてもおかしくない世代か。
実際に血縁があっても、家族に殺されたりしてしまうのだから、血縁が全てではない。そして血縁がなくても、家族が成り立つ。
血よりも大切なメッセージを受け取った。